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This page pertains to UD version 2.

expl: expletive

関係explとは虚辞 (expletive) や冗語 (pleonastic) を表す名詞句を指す.これらは述語の項位置に生起する名詞句ではあるが,それら自身は述語のいずれの意味役割 (semantic role) も満たさない.節の主述語 (動詞,叙述形容詞もしくは名詞) が支配項となる.英語において,itthere のいくつかは虚辞に該当する: 外置構文 (extraposition construction) における存在のthereit. (itthereは虚辞でない用法もある).

There is a ghost in the room
expl(is, There)
It is clear that we should decline .
expl(clear, It)

自由なpro-drop (明示的な代名詞の代わりにゼロ照応 (zero-anaphora) が使える) を有する言語によっては,英語のような虚辞を持たないものもある.

この種の虚辞を持つ言語では,虚辞は必須項が生起する場所に位置することができる: 以下の例に見られる主語と直接目的語 (間接目的語も) のスロット.これらの例の分析において,後置主語 (postposed subject) や節内の項は規則的な必須項として扱われ,虚辞はexplとして標示される.

There is a ghost in the room
expl(is, There)
nsubj(is, ghost)
obl(is, room)
I believe there to be a ghost in the room
nsubj(believe, I)
expl(believe, there)
xcomp(believe, be)
nsubj(be, ghost)
obl(be, room)
It is clear that we should decline .
expl(clear, It)
csubj(clear, decline)
That we should decline is clear .
csubj(clear, decline)
I mentioned it to Mary that Sue is leaving
nsubj(mentioned, I)
expl(mentioned, it)
obl(mentioned, Mary)
ccomp(mentioned, leaving)

関係explに関連する第二の使用法は,真正な二重接語 (true clitic doubling) に関するものである.接語や語彙的名詞句が相補的分布を示す言語 –”Kayneの一般化”に従うようなフランス語等の言語–において,接語と語彙的名詞句のどちらが生起したとしても,obj もしくは iobjといった適切な意味役割を受ける.口語フランス語など,そのような言語で接辞の二重化が起きた場合,語彙的名詞句を dislocated としてみなすことが正しい分析の仕方となる (例を参照),そのような事例において当該の分析は,名詞句が別の名詞句もしくは名詞句の項位置を埋める代名詞を二重化させる分析と同一になるだろう. しかし,ギリシア語やブルガリア語といった他言語においては語彙的名詞句や代名詞的接語の二重化を許すとはいえ,前者では述語の項として標準的な役割を持つ.これらの事例では,語彙的名詞や接語のうち1つのみが節に現れた場合に限り,どちらが生起しようとも objiobj 等の役割が付与される – 他言語における語彙的名詞句と代名詞の扱いに並行して, 接語代名詞は文中の異なる位置に生起する. しかし,両者が生起した場合,名詞句はobjiobjなどの文法役割を得る.そして,接語は代名詞のコピーとして扱われ,それ自身の意味役割を得ないためexplの役割を得る. これは上述した英語の_it_と_there_の扱いと並行的であり,このとき別の句が述語の意味役割を満たす. ギリシア語とブルガリア語の例は以下に示される:

Της τον έδωσε της Καίτης τον αναπτήρα \n PRON.Fem.Gen PRON.Masc.Acc gave ART.Fem.Gen Keti.Gen ART.Masc.Acc lighter.Acc
expl(έδωσε, Της-1)
iobj(έδωσε, Καίτης)
det(Καίτης, της-4)
expl(έδωσε, τον-2)
obj(έδωσε, αναπτήρα)
det(αναπτήρα, τον-6)
Marija mu izprati pismo na rabotnika \n Maria 3.S.M.IO sent letter to the.worker
expl(izprati, mu)
obj(izprati, pismo)
iobj(izprati, rabotnika)
case(rabotnika, na)

再帰代名詞

虚辞の関係は再帰動詞 (reflexive verbs) へ付加する再帰代名詞 (reflexive pronouns) にも用いらる (素性 u-feat/Reflex を参照せよ).再帰代名詞とは再帰代名詞なしでは生起しない動詞を指し,ゆえに代名詞が通常の目的語の役割を果たさない (一方で,再帰代名詞は通常の代名詞や他の名詞句との置き換えが可能である).

UDでは再帰代名詞 (接語) に複数の機能を認めており,これらは関係explのサブタイプを用いることで区別される (このアプローチが認められることは 2015 Uppsala discussion of clitics を参照されたい.):

チェコ語の例:

Martin se bojí zvířat . \n Martin REFLEX fears animals .
expl:pv(bojí, se)
expl:pv(fears, REFLEX)

虚辞のさらなる一般的は議論については Postal, P. M., and G. K. Pullum (1988) “Expletive Noun Phrases in Subcategorized Positions,” Linguistic Inquiry 19(4): 635–670 を参照されたい. 二重接語 (clitic doubling) のステータスや,代名詞コピーの一種である接辞の項となる語彙的名詞句に対する議論については,特にBoris Harizanov (2014) Clitic doubling at the syntax-morphology interface: A-movement and morphological merger in Bulgarian. Natural Language and Linguistic Theory で行われている.


expl in other languages: [u]